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月館の殺人 上・下
- 2006.08.14 Monday
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- 12:54
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人気ミステリー作家の綾辻行人氏と、「動物のお医者さん」「おたんこナース」「Heaven?」等で有名な漫画家 佐々木倫子とのコラボ企画。
この作品のために綾辻行人氏が書き下ろしたシナリオを、佐々木倫子が月刊誌IKKIで2005年2月号(2004年12月25日発売)〜2006年6月号(2006年4月25日発売)まで連載していたものが、上下巻のコミックスになりました。
小説の漫画化ではないので、漫画ならではの描写が生かされている秀作です。
ちなみに、タイトルは綾辻氏の「館シリーズ」とは関係ないのでご注意くださいw
■月館の殺人 上・下 【ジャンル:マンガ】
上巻 2005/08/10発売 1050円 | 下巻 2006/07/28発売 1260円 |
作品紹介はこちら → IKKI公式サイト 「月館の殺人」
ネタバレはありませんので続きも安心してご覧ください。
これはー・・・。対象年齢がかなり上ですね。少しでも鉄道ブームやSLブームにのっていた世代じゃないと、面白さが十二分に伝わらないかも知れない。そうではなくても十分に面白いとは思いますが。
自分は結構いい年ですが、それでもSLブームという世代からは遠く離れていて、少し上の世代がブルトレ(ブルートレイン)ブームという微妙な感じ。かくいう私も、一番好きな電車は115形湘南カラーという普通っぷりです(ただし113形ではなく115形、211形は嫌いという微妙なこだわりあり)。スワローエンゼルに燃えた時期とかがないと、些細な小道具の萌えには気づかないかもしれない。定期券収集家の描写に出てくる定期券の区間とか、使用済み切符の駅名とか、細かいところも分かる人には大ウケのはず。
トリックはかなり大掛かりな設定によるものだけど、いったん種が分かってしまうと「そんなのあるかよー?」というばかばかしさ。でも「それ」が実際あるかのように精密にかかれている描写のため、ばかばかしいのにリアリティがある。
このシナリオで一番面白いのは「最後まで設定が分からない」ということ。
連載で少しずつ設定が分かりながら読み進めていくと、途中までかなり頭が混乱すると思うけど、一度タネが分かった後に最初から読み進めていくと、細かいところまで不整合なく描写がされているのが分かります。雷で照らされる風景、見覚えのある乗務員、同乗する乗客の回想、全てに整合がとられていて、それが最後に一致する様子はかなり爽快。
特に上下巻を分ける上巻最後のシーンは完璧。そして、上下巻の冒頭が同じシーンであるにもかかわらず、意味がかなり異なっているところも見ものです。連載中、少しのブレもなくシナリオどおりに進めていったのだなぁと感じられました。
後日談のようなものが全く無いので、その後どうなったかというのは激しく気になりますが、まぁあの設定がばらされた後では蛇足になるのでしょう。こちらは想像にまかせるということでしょうか。
それから、犯人の心理描写が無いのも気になります。あれだけの惨事に発展しながら、その理由などが詳しく描かれていないので、ちょっと納得できない部分もあるかも。周囲の人が代弁的なことを行っていますが、真相は闇の中・・・でしょうか。
対して、脇役とも言える同乗者が必要以上に生き生きと描かれているのは佐々木倫子ならでは。テツの乗客が自分の得意分野をもう本当に得意げに話すのを見ると、鉄道に興味がなくても思わず「鉄道も面白いのかも」と思ってしまうかも。後半の重要人物、十蔵氏が旧函館駅の時計台の時計を所持していると知ったときの彼らの反応、「十蔵氏、枯れてねぇ!」という台詞も心の底から感嘆していてかなりウケる(これも、函館駅改修がいつだったのかを知らない読者には「?」かもw)。
乗客だけではなく乗務員にも細かい設定があり、それが十分に生かされていて、どこまで細かく読んでもボロがでないどころか面白くなってしまうのはさすがです。
(ちなみに自分が好きなのは模型テツの竜ヶ森君と、ピアニスト兼料理人の倉石君でしたw)
佐々木倫子ファンは必見。相変わらずの緻密な描写に舌を巻くことでしょう。ただし鉄道に全く興味がないと、その緻密な描写の意味がわからない恐れがありますので注意w
鉄道ファンも必見。思わずニヤニヤしてしまいます。
推理ファンは・・・うーんどうかな。かなり突拍子もない設定でも許せるのであればお奨めです。
多少細かいところが分からなくても、話の持つ勢いだけでも十分楽しんで読める本。ぜひ一度、じっくり読んでみて欲しいです。
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