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読書感想文:空の境界

今映画やってますよね、空の境界(からのきょうかい)。
冬コミに行ったら映画のプロモが流れていて、主人公の声が鈴村健一さんと坂本真綾さん。「こりゃぁなんて種デスですか」と思って一気に興味がわいた訳です。
しばらく入院していたため本を大量に読む時間があったので、一気に読破してみました。

空の境界奈須きのこ
映画化にあたり刊行された講談社文庫版。挿絵アリで章の区切りもよくお勧め。


元々発行されていた新書サイズの講談社ノベルス版。文庫版より高い。
文庫版よりも先に発行されているので、アマゾンのレビューが豊富。


劇場版「空の境界」 公式サイト
竹箒 作者公式サイト

途中までは核心に触れるようなネタバレはあまり書いていません。途中に「ネタバレ注意」のお断りを入れた後、ネタバレ全開にいたしますのでご注意ください。
私があらすじを書くと長くなってしまうので、あらすじはアマゾンの作品紹介ページなどでどうぞ。
■どんな本?
ジャンルとしては、私の年代(詳しくは言えないが)にとても親しみやすい「伝奇小説」です。
作者は絶対に「創竜伝」の田中芳樹とか「宇宙皇子」の藤川桂介とか、菊池秀行とか夢枕獏とか栗本薫とか小松左京先生とか大好きだっただろう!と思ってしまう作品。っていうか、これら全部自分が好きだっただけですが。まぁ、そっち系な訳です。
しかし、私がそれらの作品と明確に異なっていると認識したのは「立てたフラグは全部回収している」という点。ちょっとした出来事にも理由があって、それらが絡みあって、最後に全て解明する。読み終わった後にスッキリはするのですが、作者が全ての構図をきちっと決めすぎていて、読者が色々と想像をめぐらす余地があまりありません。この辺は好みが別れるところだと思います。

作品の緻密さというのはいたるところに生きています。この小説、結構長いのですが、大きなイベントはあまりこなしていない。情景とか、表情とか、風景とか、会話とか、そういう細かい部分の描写を丁寧に行っているため、実際の行動を起こしているシーンが意外と少ないんですよね。本のアオリには「"直死の魔眼"を手に入れた少女・両義式を襲う数々の怪異」なんて書かれているから、この少女が色々とアクションをしてくれるのかと思いきや、大立ち回りをするのは1章につき1回くらい。この本を読んで、読者に「このシーンの見取り図を書いて」といわれたらほぼ全員が同じ図を描けるんじゃないかと思う。それくらい描写にページ数を裂いており、実際に活動しているシーンは多くない。
最近のゆとり世代には、宮部みゆきとかこの本の作者の奈須きのことか、こういう全て決められている、「考える余地の無い話」の方が好まれるのかも知れませんね。

私とほぼ同じ世代の作者は、いたるところに私ぐらいの世代の読者がニヤリとしてしまうようなモチーフを含んでいます。
「ヒュプノスとタナトス」とか「易に太極あり、これ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず」とか、自分が中二病だったときに熱心に調べたよなぁ、という要素がちりばめられています。
ただ、そういうのをちりばめすぎて、逆にリアリティを下げている箇所もいくつか。クスリに関するイベントがいくつか出てくるのですが、小さい頃から病弱で色々な薬に慣れ親しんでいる自分にはその辺がかなりお粗末に感じられました。「アップ系とダウン系」とか「カクテル」とか、リア厨あたりでも知ってるだろうという知識を披露して驚かれる幹也。とある状態の人間を作りだすために使われた薬はなんとアスピリンやインドメタシン。こんなバファリンだのシップ剤に使っているような薬品を使ったって、その状態になる前に内臓がただてダメになりますよ。
和服についても、分かっているのかと思いきや袷だと帯が大変だから単衣とか・・・。夏服か冬服かの違いだから、裏地があるか無いかの違いが帯に関係するのか?
あまりに細部にこだわりすぎるあまりに破綻するくらいなら、「ミノフスキー粒子」のような伝家の宝刀でも作ってしまえばよかったのに。「根源と起源」とか「魔術師と魔法使い」とか、作者が構築している世界観は緻密、精密に組み立てられているので、その辺は残念に感じました。

気になるのが、明らかに書き間違いと思われる描写が残っていること。式の住まいが1章では「マンション」なのに3章以降では「アパート」となっていたり・・・。読んだのが図書館で借りた初版だったから、重版では直っているのかな?描写にこだわる作者のように思えるので、こういう凡ミスが残っていることが非常に不思議です。
あと、不良でもない未成年が飲み会をやったり、クスリをやったりというシーンが当たり前に出てきて、法令遵守な意識がすごく低いのも気になる。ケータイ小説じゃないんだから、そういうのやめようよ・・・。簡単に人が死ぬこの小説では瑣末なことなのかな。

■構成
この本は「1 俯瞰風景」「2 殺人考察/上」「3 痛覚残留」「4 伽藍の洞」「境界式」「5 矛盾螺旋」「6 忘却録音」「境界式」「7 殺人考察/下」「空の境界」と、7章構成になっていています。章番が振られていないのは、外伝みたいな感じなのかな?この作品の初出はコミケでの同人誌らしいので、外伝って感じかな。
時間軸はまっすぐに進んでいくわけではなく、章ごとに前後します。いきなり現在と過去を移動するわけではないけど、それに気づくまではちょっと戸惑うかも?
章の構成は「5 矛盾螺旋」がジョジョで言う「3部 スターダストクルセイダース」のような感じ。つまりメイン。「7 殺人考察/下」で全ての秘密が暴かれるのだけど、ボリュームから言っても内容から言っても、私は5章がメインだと思う。
この作品は、現在講談社文庫版で上中下巻、講談社ノベルス版で上下巻で購入することが出来るけど、絶対に講談社文庫版をおすすめ。私は講談社ノベルス版を読んだのだけど、メインの5章の途中で上下巻が分かれており、上巻のラストには長い上につまらない(要約すると、1980年前後は伝奇小説が盛んだったが、それらのラスボスであるべき昭和天皇が崩御されたために勢いが無くなってしまった、という不敬極まりない内容)解説がついており、続きを読む気が失せてしまう。文庫版は当たり前のように文庫サイズだけど、講談社ノベルス版は新書サイズで上下段が分かれているために読みにくい(私の好みではない)というのも一因。講談社文庫版はきちんと章ごとに巻が分かれているので、安心して読める。

■おすすめ度
先に出した作者群で好きな作家がいれば、すんなり入れると思う。特に、私くらいの世代よりもう少し若い世代、現在高校生とか大学生くらいの方が入り込めると思う。
「ライトノベル」の部類に入るかどうかはかなり微妙。世界観を完璧に入れていかないと読めないので、気軽に読むにはちょっと辛い。私はあまり本を読むのが早くないが、全部読むのに丸2日(計10時間くらい?)かかってしまった。もう1回読めば「こういうことだったのか!」と手を打つようなシーンがたくさんあると思うんだけど・・・コレをもう一度読むなら私は「日本沈没」を読みたい。つまり、私とはもう世代がずれてしまっているということなのかもしれない。

ただ、映画は見ておきたい。調べてみたら、鈴村健一さんと坂本真綾さんだけでなく、田中理恵さんとか保志総一朗さんとかも出るじゃないですか。そろそろ石田彰さんが出てきてもおかしくない!
うっかりしていたら1章の公開が終わってしまった・・・誰か一緒に見に行きませんか?(特に鈴村さん好きの某さんとか)

対象:伝奇小説好きな若者
おすすめ度:70点(映画化の話題を+20点加点して)






--ここからネタバレ注意--
■キャラ
両義式・・・主人公。ツンデレ。いつも和服。姓名をどこで区切るのか分からない主人公の女の子。1章での男言葉が嫌だったのだけれど、それは理由があることだと分かったので何とか最後まで我慢した。理由無く男言葉だったとしたら、1章で読むの辞めてる。
黒桐幹也・・・主人公。いい人ぶってるけど、調査のためとか言ってクスリやってみたり、結局はアウトローだと思う。性格は穏やかで調査の腕は確か。
蒼崎橙子・・・主人公の上司ですご腕の魔術師。よくタバコを吸ってる。「タバコ吸う=オトナ」というステレオタイプが嫌でどうにも好きになれなかった。その他の要素は嫌いじゃなかったのに残念。唯一、話が出て結びが無かった「妹」は、「月姫」に出てくるそうです。
黒桐鮮花・・・この小説で唯一、自分が萌えたキャラ。
秋巳大輔・・・デスノートで言えば松田。癒しキャラ。
荒耶宗蓮・・・ジョジョで言えばDIO。
巫条霧絵、浅上藤乃・・・薄幸ズ。この作品はメインキャラ以外の扱いがひどい。
臙条巴・・・すごくいいキャラだったと思う。

■各章の感想
・俯瞰風景/痛覚残留
なんか人死にすぎな割には扱い軽くてへこむ。

・矛盾螺旋
一番盛り上がって、ワクドキされされる章でした。「アレとアレの黒幕はこいつだったのか!」とか魔術大活躍だったりとか。式は途中あまり出てこないのですが、一番この世界観を楽しめる話かなぁ。この章のボスである荒耶の掘り下げがあまり無いので、よくある「ナルシストなマッドサイエンティスト」的なイメージを持ってしまったところはありますが、それでも色々な仕掛け合いは読んでいて楽しい。

・忘却録音
これは「矛盾螺旋」という大作が来た後で、ちょっと蛇足気味に感じられたのは気のせい?私はこの作品の中では一番鮮花が好きなので、彼女が活躍してくれるこの章は悪くないけど・・・でもそういう人向けのちょっとした息抜き、コーヒーブレイク、死闘の後のクールダウン、って感じでしたねー。

・殺人考察/下
「殺人考察」の上が終わった後、何事も無かったように次の章が始まったので「おいおいあの大量殺人はほったらかしかよ」と思って読み進めていたら、最後の最後で犯人が明かされました。うーんそうくるのか。ちょっとしてやられた感というか拍子抜け感がありました。
そして、最後の戦闘は麻薬と筋弛緩剤という、中学生でも思いつきそうな薬に主人公ズは負けそうになってしまうわけです。せっかく「直死の魔眼」とかそういう美味しい素材を散りばめているのに、上手く料理できておらず消化不良の感が。せっかくの伝奇モノなんだから、変に現実のモチーフなんて使わずにそっち方面で突っ走ればよかったのに。
ラストが荒耶ではなく里緒なのも、魔術ではなく薬なのも、「得体の知れないものより現実の方がよっぽど怖い」というメッセージなのかもしれませんが、その辺の掘り下げがあまりなかったので、読者である私にはそういうメッセージは感じられませんでした。

・空の境界
一番最後に数ページだけ書かれている「空の境界」で出てきた3番目のシキ。これは「あぁ〜」と妙に脱力というか納得というか。
読み返す気力がないのでどんなシーンで誰が誰に言ったセリフが覚えていないのだけど、真ん中あたりの章で「だって幹也が好きなのは・・・」という感じのくだりがあった。「え?もしかして幹也が好きなのは識っていう複線で、腐女子を取り込むためのフラグ?」と思っていたのだけど、その後何も進展が無かったので半分忘れていた。そしたら最後にこう来たんだ。7章のラストは何だったの?幹也は報われないの?なんだかもやもやとする締めになってしまった。

■ラストについて
これまで大量の異常殺人をしていたのは式である、という風に見せかけておいて、なんと里緒という脇役ぽいやつが犯人でした。
簡単に人が死ぬこの話ですが、一応「人を殺すのはよくない」「命は大切だ」ということを命題としていて、どう落とし前をつけるのかと思ったら、7章まで、式も識も一人も殺していなかった。で、最後にとうとうやっちゃったもんだから、式も幹也も死んでしまうバッドエンドもありかなぁ、と思ったら、予定調和的に「今まで罪を重ねてきたけど、僕達には償うための明日があるさ」という爽やかな感じの終わり方。自分のしたことに目を背けず前を向く、というのは大切だけど、今まで重い重い内容だっただけに、浮上するのにもう少しページ数を割いてもよかったんじゃないかなぁと思います。


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